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分権?

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月26日(土)23時31分10秒
  中央集権か地方分権か、それが問題だ。

といっても、もちろん、ボクは政治には興味がないので、きわめて個人的な問題である。

ようするに、デジカメと携帯音楽プレーヤーとICレコーダーと携帯電話を別々に持ち歩くべきか、それとも、すべての機能が一緒になっているものを持ち歩くか、いつも悩んでいるわけ。

中央集権も地方分権も、一長一短なんだよなぁ。

今は、携帯は携帯。首からiPodシャッフルを下げて、ICレコーダーも別。古い携帯なのでデジカメ機能は30万画素なので、次、どうしようか迷っている。
ICレコーダーは、講演のときにしか必要にならないので、別でもかまわないや。
デジカメは、どうするか悩むところだよね。

もちろん、携帯の画面でWebを見るのか、それとも小さいパソコンを持ち歩くかも思案のしどころだ。

く、くだらない悩みですみません。
 

3つの講義

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月26日(土)16時49分2秒
  1 

3月25日の朝カルのDo科学「アインシュタインが世界を変えた」



4月2・3日の東急セミナーBE「アインシュタイン理論のエッセンス」



4月からの朝カル通常講座「やり直す物理学 ゼロから学ぶ相対性理論」

***

この3つの講義の関係についてご質問をいただいたので、ここに簡単に書いておきます。

まず、3月25日の講義は春休みということもあり、高校生にも理解してもらえるように写真や図を使って、相対性理論の不思議な世界を体験してもらおう、というのが狙いで、数式はまったくでてきません。入門の入門という位置づけです。

次に4月2・3日の東急セミナーBEのほうは、週末を使って、特殊相対性理論のエッセンスをやります。主な狙いは、相対論が理解できた、と実感するのに私が必須だと考えている「時空図」(ミンコフスキー図)の描き方と使い方の伝授です。「わからない」と投げ出す前に、とにかく「使ってみる」。習うより慣れよ。2日の集中講義ですので、エッセンスを抽出して講義します。数式は四則演算と平方根だけです。

最後に、4月からの朝カルの公開講座は、2時間かける6回という時間を使って、拙著「ゼロから学ぶ相対性理論」を読み進めていきます。相対論の動機から始めて、時空図を習得して、さまざまなパラドックスを解いてゆき、最後は一般相対論の入門までいきます。

今年は、その後、朝カルで引き続きアインシュタインの重力理論やブラックホールや宇宙論の世界を講義したいと考えています。
微分形式やループ量子重力については、レベルが高くなってしまうので、生徒さんの数が集まるかどうかで検討させてください。(10名以上集まらないと開講できないと思います)
 

予防接種かなぁ

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月25日(金)23時40分7秒
  今日の朝カルは、ようやくシュレディンガー方程式を実際に解くところまで行った。

かなり丁寧に基礎的な例を解説したので、少なくとも「量子力学ってこういうもんなのか」というコンセプトは理解してもらえたのではないかと思う。

トピックスは宇宙の波動関数。

次回は、いよいよ行列力学の登場だ。

それにしても今日は寒かった。
久しぶりに朝カル物理の生徒さんと宴会。

顔と手の甲の発疹だが、どうやら、インフルエンザの予防接種が原因らしい。
専門家が二人もいたので訊ねてみた。
「当日、身体が弱ってたんじゃないですか」
「やはり、そうか。オレは繊細なので、予防接種をした日、弱っていたにちがいない」←ここでK妻がせせら笑う
 

量子重力本

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月25日(金)16時26分21秒
  執筆が大幅に遅れている量子ループ重力本だが、ようやく脱稿が現実味を帯びてきた。

今回は、数式だらけでもなく、かといって比喩的な説明だけでもなく、なるべくバランスを取って書いている。
読者対象を「少し数式があったほうがわかる」という物理ファンに絞って。

具体的には、ニュートン力学の素養しかない架空の生徒を思い浮かべて、実際にループ量子重力理論を2時間かける6回で講義するような感じだ。
そんなこと可能なのかと言われるかもしれないが、厳密な導出や証明はせずに、「アナロジー」と「概念の拡張」という形式でゆるやかに量子重力の世界を紹介するのである。

実は、いろいろと微分幾何に関する質問などもいただいており、そういったものも盛り込む予定。

一般相対論の本などでも、いきなり「共形変換」が出てきて計量を変換したりするが、なぜ、そんなことをするのか、といった「意味」が説明されてないことが多いようだ。
あるいは「多様体」という概念が頻出する理由とか。

ちょっと話は変わるが、最近、
「ブラックホールのホーキング放射の説明では、たとえば電子だけが外に逃げて、陽電子が落ち込んでしまうように思われるが、逆に電子が落ち込んで、陽電子が逃げる場合も同じくらい頻繁に起きるのではなかろうか。だとしたら、帳消しになってしまうのでは?」
というような質問をいただいた。

個別に返事が書けなくて恐縮だが、もちろん、逆のパターンも同じ頻度で起こるのである。
だが、放射が帳消しになることはない。
外に出てゆく陽電子も正のエネルギーをもっているからだ。
偶然、電子と陽電子がぶつかって消滅しても、お互いに対生成されたもの同士ではないので、「何も起こらなかった」ことにはならない。

とうわけで、量子重力関係で、素朴な疑問がございましたら、メールにて質問をお寄せください。
個別にご返事を差し上げることはできないかもしれませんが、本の中に反映させることができるかもしれませんので。

まだ、間に合います。
 

ガリレオの指、ふたたび

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月25日(金)15時58分3秒
  ペンローズの新しい本の書評がネイチャーに載っていたが、イギリスの本は、どうして、あんなに格調高くつくることができるのだろう?
同じ資本主義の国なのに、実に不思議だ。

つまりは、「資本主義」とか「民主主義」とか「憲法」というものの根底に横たわる歴史と経験と思想の深みがちがう、ということなのだろう(溜め息)
ならば、日本は、とことん、日本の思想でシステムをつくっていけばいいと思うが、外圧もあるし、そうもいかないから哀しき猿真似に終始するんよね(溜め息、溜め息)

***

新聞の書評で褒めて、この日記で少し苦言を呈した「ガリレオの指」だが、ここに来て、ふたたび「必要項目」を読み返して、ひとりで頷いていたりする。
優等生の本で分野も総花的なので、日記で文句を書いたのだが、どうやら、この本はポピュラー・サイエンスの典型的な本というよりは、科学の周辺で仕事をしている人間の参考書のような役割があるのかもしれない。
一つだけ確かなことは、執筆者の専門外のことも、王立学会の錚々たる面々が読んでチェックしているので、現時点での「正しいと思われている定説」がきわめて精確に記述されている、ということだ。

つまり、科学ジャーナリストや科学者やオレのような人間が、ちょっと専門とちがう分野を概観しようと思ったら、ガリレオの10本の指のどれかのページを開いてみればいい、ということになる。

ちょっと便利だぞ、この本。←結局、褒めてる
 

本当の自分

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月25日(金)14時56分29秒
  テレビで有名人の番付みたいなことをやっていて、よく見て笑っているのだが、やはり有名人病とでもいうべき病があるようだ。
実に可笑しい。

心理学では、自分が自分に対して抱いているイメージと他人が自分に対して抱いているイメージ(の平均値?)の間の乖離(かいり)を問題にするが、テレビに出てくる有名人を観察していると、どうもナルシスト的な傾向が顕著のようだ。
つまり、周囲からは、そんなに評価されていないのに、自分では自分のことを過大評価している。

漫画家のサトウサンペイさんがどこにも顔写真を公開しないことで有名だったが、その理由は、
「面が割れると好きに遊べなくなるから」
だったそうだ。(半ば冗談なのだろうが)

たしかに、有名になって顔を知られてしまうと、いろいろと不都合が起きるような気はする。
たとえば、ステテコ穿いてコンビニに買い物に行ったら、
「あ、有名人の○○がステテコ穿いてる」
と後ろ指を指されるだろうし、近所のビデオ屋でエッチなビデオを借りたら、レジの女の子に、
「有名人の○○さんなのにこんなビデオを見るんだ」
と軽蔑されてしまうだろう。(注:オレは、有名人でないし、ステテコも穿かないし、エッチなビデオも借りない。たとえばの話である)

よくK妻がテレビを見ながら、
「コイツ、勘違い入ってる」
とコメントを発するのだが、見ていると、その勘違い有名人は、自分を過大評価しすぎていて、「現実」に直面したときには怒ったり泣いたりする。

そういえば、K妻は正反対で、驚くほど自信がない。インストラクターの仕事だって、生徒さんの指導には定評があり、集客がよくて、いろいろな施設から声がかかるし、もうちょっと自信をもってよさそうなものだが、なぜかダメなんだな。
「私は運動神経ゼロだから」
というのが口癖だ。そんなこと言われたら、アブスライドでお腹を引っ込めている、こちらの立つ瀬がなくなるじゃねえか。

こういう問題は、本当の自分と観察される自分との乖離なわけだが、もちろん、「本当の自分」なんてものがあるかどうかも疑わしい。
あるのは、自分も含めた大勢の人間による「その人のイメージ」なのであり、関係性のネットワーク以外に「核」(コア)となる「自分」なんて存在しないのかもしれない。

ただ、一つだけ確かなことは、あまり有名でない立場にいるかぎり、イメージの乖離に苦しむことは少ない、ということだろう。
個人的には、仕事関係のサークルで、それなりに良い評価を得て、地道に仕事を続けながら、最終的に人生の終わりを迎えたときに、自分の好きなことをやり遂げる・・・オレの場合は、一冊の本を遺したいだけだが・・・というのが理想だ。

うーむ、こんなこと書いてるから、「白髪三千丈」とか言われちゃうんだよね。
 

ホーキング書いてます

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月25日(金)07時05分34秒
  ペンローズ・ホーキングの特異点定理をどうやって初歩的に説明しようかと思い悩み、いろいろ書いてみたが、やっぱダメだな、こりゃ。
あまりにも一般的すぎて、証明の説明をしても何の意味もない・・・というか逆効果になりそう。

逆転の発想で、フリードマン宇宙のような例に出てくる具体的な特異点を紹介して、あとは3つの前提条件を説明することにした。

ホーキングの論文や講演を読んでいると、いろいろと面白い特徴があることに気がつく。
ブラックジョークが多いし、「ロシア人」とか「中国人」とか「科学哲学者」とかの際どい悪口が目立ち、あとは名前をあげて他の研究者の間違いを指摘する。
それから、説明図がわかりにくいこと。これは閉口させられる。なぜ、わかりにくいかといえば、図が一般的すぎるからだ。しかし、こういう図を用いて説明するということは、もともと、ホーキングのアタマの中で起きていることが、一般的かつ抽象的なのだと推測することができる。
また、講演でも、数式の展開をそのまま言葉にして説明することが多く、数式を知らない聴衆には、かなり厳しいよね。数式がわかる聴衆は、逆に数式を見せてもらったほうがわかりやすい。

ホーキングは、ある意味、ファインマンの対極に位置する感じがする。

自信たっぷりのわりに、他の物理学者との賭けにことごとく負けているのも面白いが、それも、ホーキング一流のブラック・ジョークなのかもしれない。
 

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月25日(金)03時37分41秒
  気がつくと病院のベッドに寝ていて、隣にはアラゴルンが倒れている。アラゴルンといえば齢80のおじいさんだ。
オレはフロドーで、気がつくと黒頭巾が剣を振り降ろした!

K妻と「指輪物語」のメイキングを見ていたら、突然、眠気に襲われてベッドに横になったのだが、延々、中つ国の夢を見ていたらしい。

朗読CDのほうは、K妻は、通勤の行き帰りでCD1枚は聞いてしまうので、競争心が起きてきて、オレも負けじと聞き始めた。
Rob Inglisという人の朗読は、非常にいい。
ゆっくりめで情感がこもっていて、原作を始めて「聞く」オレも、原作は熟知しているが英語力は劣るK妻も、それなりに英語朗読が理解できるから面白い。

日本語翻訳があれこれ言われていて、K妻も「ストライダー」を「馳夫」としたり「レンジャー」を「野伏」とするのや庭師サムの言葉遣いなどに違和感があるそうだ。
で、代替案を話し合ったが、これが意外と難しい。

まず、「ストライダー」は、たしかに「野を馳せる」というところから馳夫になったらしく、おまけに原著者のトールキンが翻訳はその国の言葉に置き換えるよう希望していたというから。
こういうときによくやるのは、「流浪者(ストライダー)」とでもルビで逃げておいて、2回目からは「ストライダー」にしてしまうという手。

「野伏」(のぶせ)のほうは、山伏を連想させ、また「武士」という言葉も連想させる。レンジャーは探検とか警備とか狩猟とかで歩き回るイメージなので、こちらも、実は、とてもよく考えた訳だったりする。
だとしたら、「浪人(レンジャー)」で2回目からはレンジャーか?
木枯し紋次郎に侍のイメージがだぶっている感じかもしれない。

そう、文句をいうのはたやすいが、代わりにやれと言われたらアタマを抱えてしまうんだな、これが。

小説の訳語を考えるなんて、くだらない遊びだが、ちょっと愉しい。

嫌なことを忘れて、しばし、8千年前の神話の世界に浸るのも精神衛生上、いいかも。

***

と、いいつつ、今は、いきなり現実に引き戻されて、仕事中だったりする。
気合いを入れ直してがんばろう!
 

解説

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月24日(木)18時47分18秒
  こちらのボツ原稿は、説明調で、おまけにオチがオジサンっぽいのでお蔵入りにしました。

もう、ボツだらけだ! ぐぅ。
 

ボツ原稿別バージョン2

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月24日(木)18時46分8秒
   やれやれ。太陽と月が相いれないがごとく、物理学の二つの顔も相性が悪いようだ。
 アインシュタインが登場して、宇宙が曲がっているとか、宇宙旅行をして地球に戻った宇宙飛行士は浦島太郎みたいに年をとっていない、などというSF的な理論を構築して人々を驚かせてから100年の時がたとうとしている。アインシュタインの仮説の多くは実験によりたしかめられたから、人々は、自分たちの棲んでいる宇宙が「SF」のひとつにすぎない可能性を認めざるをえなくなってきた。
 もっとも、理論物理学者の一部は、かなり前から、物理学において、現実(=ノンフィクション)と虚構(=フィクション)の境界が崩れ始めていることに気づいていた。この世が現実なのか、それとも夢にすぎないのか、誰にもわからない。宇宙が「無」から自然発生したのか、神のような知的生命体が実験室の中でつくりだしたのかもわからない。だから、現実という言葉は徐々に意味があいまいになってゆき、しまいには、映画のシナリオと区別がつかないような逆転現象が起こりつつある。
 実をいえば、同じような現象は、かなり昔から文芸の世界でも起きていた。
 十年ほど前、作家の筒井康隆が朝日新聞に小説を連載していたら、
「この作者は頭がおかしいから連載を中止せよ」
 という手紙が殺到した(?)という逸話が残っている。
 映画や小説の技巧の一つに「劇中劇」というのがある。物語の主人公が映画館で観客の一人としてテレビを見ているとしよう。いったい、誰が現実で、誰が虚構なのだろう。小説や映画というフィクションの世界の中に、また別のフィクションの世界があり、そのフィクションの中にも、さらに下のレベルのフィクションがある……。
 筒井康隆の小説は、そういった「現実の危うさ」と「虚構性」を鋭く突いていたのだが、残念ながら、新聞の読者の多くは、
「現実は現実で、虚構は虚構だろう」
 という杓子定規な思考パターンから逃れることができなかったので、
「筒井康隆は狂っている」
 という結論に達したのである。
 今となっては笑い話でしかないが、当時、日本中を熱狂させた筒井ワールドは、最新の物理論文が描く世界と驚くほど似ていた。
 そして、筒井ワールドが面白かったのと同様、奇妙キテレツな物理ワールドも、とんでもなく面白いのである。
 ただ、残念なことに、そういった物理ワールドは、巧妙な仮面をかぶって隠れていることが多い。数式まみれになって、英語の専門雑誌に発表されるので、あまり一般読者の目にふれる機会がないのだ。
 本書では、宇宙論や物理学の虚構世界を覗くことにより、その愉しさや面白さを読者に伝えてみたい。また、僕がこれまで出会った科学者たちや、実際に会ったことはないけれど論文を通して出会った仮説から、極上の「ナイトサイエンス」を抽出して、科学好きの読者のもとにお届けしたい。
 誤解のないように申し添えておくが、僕は、この本で紹介するような科学者たちの「人間的な側面」が大好きなのだ。だから、一見、「象牙の塔の懲りない面々」というようなスタンスで、科学者や異端学説を面白可笑しく取り上げているだけのように思われるかもしれないが、その裏には、「わが愛すべき科学者たち」という、科学と科学を担う人々への深い愛情が流れていることを強調しておきたい。
 なお、本書の構成は、おおまかに第1章が宇宙の話で、第2章が物理の話で、第3章が人間模様になっているが、基本的に「変幻自在」に話題が登場する。とにかく、科学の「夜」の側面に焦点を合わせた、愉しい科学読み物なのである。
 酒の肴に一席ぶってヒンシュクを買うもよし、夜中に一人でほくそ笑むもよし、あなたにとっての「夜の物理学」となることを願って。
 

裏横浜の猫神庵にて
2005年 早春 
竹内薫

注 フランス語で「ロマン」とは小説、つまりフィクションのことです。このシャレ,ちょっと寒かったかもしれない。お赦しあれ。
 

ボツ原稿別バージョン1

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月24日(木)18時45分21秒
  はじめに 物理学はロマンだ!

 ここは六甲山の人気のデートスポット。
 愛くるしい彼女が鼈甲(べっこう)眼鏡をかけた彼氏と腕を組んで夜空を見上げている。もちろん彼女は一般常識人であり、彼氏は物理学者という設定だ。

「ねえ、ねえ、あの青白くキラキラ輝く雲は何?」
「あれは雲じゃないよ。プレアデス星団、和名は昴(ルビ:すばる)といって、何百という星が集まった星団なのだ。もともと古語の集まる……集(ルビ:す)まる……からきているのだ」
「わー、ロマンチックねぇ」
「今、われわれが見ている昴の光は、400年以上も前の姿なんだ」
「えー、どうして?」
「光は一秒間に地球を7周半するくらい速いけれど、それでも、昴は遠く離れているから、400年前に昴から出た光は、今、ようやく地球に辿り着いて、僕たちの目に入ってきたんだ」
「ふーん、400年の旅人かぁ」
「そう、時空の旅人さ」
「じゃあ、ちゃんと見ていてあげないとかわいそうね」
「ちなみに、光の正体は光子(ルビ:こうし)といって、量子(ルビ:りょうし)の一種なんだ。量子には決まった経路という概念が存在しないから、昴から地球まで旅してくるあいだ、光子は、宇宙のあらゆる所を訪れてきた可能性がある」
「(少し眉間に皺)ほ、放浪癖ですかぁ?」
「昴から出発してからわれわれの目に入るまで、光子は、誰にも見られていないし観測装置にも引っ掛かっていないから、アリバイがあるのさ。かぎりなく犯人に近いけれども、目撃者がいないから、犯人は存在しない」
「(口が尖ってくる)なんだかキナ臭い話になってきたわねェ」

 いきなり不自然なシチュエーションで申し訳ない。
 だが、彼女が彼氏の言葉を理解できないのには理由がある。
 彼氏にとって物理学はロマンなのであり、小説や演劇の世界と同様、さまざまな悲喜劇がおりなす舞台なのだ。ところが、彼女にとっては、無味乾燥な数式の羅列と、触ったら感電するか爆発でもしそうな怖い実験装置という、ひたすら現実的なイメージしかないから、会話がちぐはぐになってしまうのだ。
 で、本当の物理学の世界はどうなのだろう?
 本当の物理学の世界には「二つの顔」がある。少なくとも僕はそう考えている。
 表(おもて)、は彼女が抱いているような、ひたすら現実的な物理学の顔。それは、発電所や軍事兵器のもとになっている理論と実験であり、実用的だが、一つまちがえば感電して死んでしまう、怖い世界だ。
 もう一つは、夢と想像が膨らむ楽園のような世界……それこそ、現実なのか仮想なのか、区別がつかないような物理学の夜の顔。
 まっとうな科学論文を読んでいると、たまに奇妙な錯覚に陥ることがある。
(この論文は、本当に現実世界を扱ったものなのか? それとも、物理学者の想像の世界にすぎないのか?)
 最新の物理学は、奇妙にSF化している。物理学の論文なのか、SF小説なのか、ほとんど区別がつかないような情況になっている。本来はノンフィクションであった物理学が、文明の進歩とともに、どんどんフィクション化しているようなのだ。

「望遠鏡でずーっと星空を眺めていれば、やがて、自分たちの姿が見えるかもしれないよ」
「は?」
「宇宙は鏡地獄みたいになっていて、前を見ていると、光が反射して、頭の後ろが見えるんだよ」
「ちょっと待ちなさいよ。それってSFの話でしょ?」
「いや、目の前の宇宙がそうなっている、という有力な仮説がある」
「(ため息をつきながら)じゃあ、このまま、ずーっとご自分の後頭部が見えるまで、ここにいらっしゃったら?」
 

今後の方針

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月24日(木)18時40分56秒
  凡ミス続きで凹んでいる。
ちょっと真面目に言い訳をしつつ、今後の対策も考えてみました。

***
いろいろとミスのご指摘をいただいているのだが・・・たとえば対数のところで「桁を見る」というのは、物理学では「オーダー」(order of magnitude)ということで、かなり普遍的に登場する。
実際、巨大数仮説などでも、1と10と100は同じオーダー(桁)だと考えてしまう。なぜかといえば、次に問題となるオーダーは10の40乗程度になるからだ。
説明不足だと思うが、これは、こういう近似的な考えなのだと思っていただきたい。

次にモンテカルロ法のところ。
本の中では、実際にはモンテカルロ法を使わないような不自然な例になってしまったが、土地の面積を「積分」するのであり、土地は平らなので、一様な乱数を発生させないとまずい。
だからルーレットでもいいしサイコロでもいいけれども、コインを投げて表の数を数えたら、1枚も表が出ない確率よりは半分が表になる確率のほうが高いので、一様な乱数にならないから非常にまずいことになる。
コインを使うのであれば、番号を書いておいて、箱の中でじゃらじゃら混ぜて、1枚だけ取り出すとか・・・。

モンテカルロ法はシミュレーションでは頻繁に登場する。
たとえば格子状のスピンが温度によってどうなるかをシミュレーションするような場合、exp(-E/kt)という確率でスピンを反転させる。
あるいは、もっと身近な例をあげるのであれば、テレビなどの視聴率を計算するとき、ベータ二項分布を使ってシミュレーションをする。

今回、計算はマセマティカで一様乱数を発生させて行なったのだが、デモのときに100円ショップで10目(あるいは8目)のサイコロがなかったので、その場で(不適切な)代用を思いついて、インチキの説明になりました(汗)

同様に本の終わりのほうのBS方程式の計算もマセマティカでプログラムを組んだので、計算は合っていますが、期間の表示をまちがえたので、本を元に計算チェックした方は、計算が合わずに困ってしまったと思います。
こちらもご迷惑をおかけしました。

どうも、マセマティカで計算をやって、それを言葉で記述するときのまちがいが目立つので、次回から、校正の段階で、数学チェックを別の人にやってもらう体制にするつもりです。
それでも、年間100万字程度のアウトプットをしているのが現状なので、どうしても取りこぼしのミスが残ると思いますが、気づき次第、なるべく迅速に正誤表という形でフォローするようにします。

読者のみなさまにはご迷惑をおかけしますが、可能なかぎり真摯に対応していくつもりですので、今後ともよろしくお願い申し上げます!
 

顔が

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月24日(木)15時49分51秒
  講談社サイエンティフィクの大塚さん来訪。
ファインマン本第3弾(=最終)の校正ゲラをもってきてくれたのだ。

「あれ? 先生、顔が・・・」
「え? 何?」
「日焼けされましたね」
「日焼け?」
「ええ、おでこの下あたりから、少し赤いですよ」
「ああ、これ? 実は、スキーに行っていたんでねぇ」

本当は、スキーじゃなくって、じんましんなんだけどな。
たしかに鏡を見ると、眉毛の少し上あたりから、顎の上あたりまでが腫れぼったくて赤い。
主観的には「お岩さん」の軽いバージョンという感覚だ。

あとは手の甲と指の付け根のところに発疹がでている。

明日、朝カルなので、みんなから言われる前に、
「スキー焼けです」
と嘘をつこうと思う。
 

解説

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月24日(木)15時44分34秒
  長々とボツ原稿を載せてしまったが、この作品が公開できなかった理由は、やはり分量にある。
最初に分量を決めて書いたのだが、この筋の展開だと、この数倍の字数が必要になる。
この字数だとオチがしっくりこない。
ようするに説明不足で訳がわからないわけ。

理論の説明は本文のエッセイ部分にあるので、目次を兼ねたショートショートなのだが、これじゃ、使えないねぇ。

時間のあるときに、加筆して、ちゃんと読める作品に仕上げようかと考えております・・・。
 

ボツ原稿7

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月24日(木)15時41分14秒
  「アリスくん、僕には、何がどうなっているのやら、さっぱり検討がつかない。事の真相を説明してくれないか」
 僕の質問に微笑み返すと、アリスは、科学的な説明を始めた。
「フィッシュバック3世は、あなたに裏切られることを予想していたの。だから、投獄される直前に、2つの宇宙を量子的にからませておいたんだわ」(量子のからみあい→●ページ)
「国家治安局の隔離用の宇宙と僕の実験室の宇宙をか?」
「ええ。だから、国家治安局の宇宙に吸い込まれた瞬間に、夫は、こちらの実験室の宇宙に量子テレポーテーションされたのよ。怪盗ルパンも顔負けでしょ? 投獄された瞬間に脱獄してたんだから」
「そうか、天才物理学者にできないことなどない、ということか」
「もともとあなたの恩師だった人物でしょう。あなたは彼の発見のすべてを知っているわけじゃない。彼は天才で、あなたは凡才なのよ。でも、彼は、あなたのことを信じていた。将来、国家治安局と科学アカデミーでの出世が約束されている人材として、政治的に助けてもらおうと思ったのよ。でも、あなたは見事に彼の期待を裏切った……フィッシュバック3世は、あなたに復讐するために、私を刺客として送り込んできたのよ」
「そうか……一つだけ訊いていいか?」
「なんなりと」
「どうやって芥川を篭絡した? 試験官宇宙の中を覗いていて、よりによって、どうして、芥川が君に惚れた? あまりにも確率が低いだろう」
「あら、やだ。ファインマンやホーキングの理論を忘れたの? 宇宙では、あらゆることが起きる可能性が重ね合わせになっているのよ。フィッシュバック3世は無数の平行宇宙をつくって芥川さんにお見せしただけ。そして、私が今ココにいる、という事実から、無数の平行宇宙の一つが選ばれたことが証明できるんでしょう」(ファインマンの経路積分→●ページ、ホーキングの人間原理→●ページ)
 あまりの非現実的な現実にぐうの音も出なかった。目を白黒させている芥川の前で、アリスは、おもむろに鞄をあけると、ラッパのような恰好をした簡易ワームホールを取り出して、その拡がった口のところを慎重に振り始めた。
「なんでラッパなんか振っているんです?」
 芥川が質問をした。
「ソーン型のタイムマシンのようだね。入り口を動かせば、アインシュタインの相対性理論により、入り口だけ時間が遅れる。その時間の遅れた入り口から入って、時間の遅れていない出口から出てくれば、早い話が、時間が戻るから、タイムマシンになるんだよ」(タイムソーン型のタイムマシン→●ページ)
 僕は、芥川に解説してやった。
「準備はいいかしら?」
 アリスが莞爾(にっこり)と笑った。僕は観念して頷いてみせた。
 いつものように大学の自分の研究室の鍵をしめて、暗い廊下を歩いて、エレベーターの前まで来たとき、忘れ物をしたことに気づいて、踵をかえした。そして、ふたたび自分の研究室の前まで来たとき、中から話し声が聞こえてきた。
「待っていたよ」
 研究室に足を踏み入れると、江戸川部長が苦虫を噛み潰したような顔つきで僕の面前に逮捕状を差し出した。
 手錠をはめられて連行されながら、僕は、心の中で嗤っていた。
(そうだ、これは、きっと夢にちがいない。現実なんてくいらでもあるんだから。ねぇ、神様?)
 

勝った

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月24日(木)01時34分38秒
  K妻がこの日記を見て「そんなこと言っていない」と反論したいらしい。
だが、K妻のHPは楽天なので、なんと、1日に1回しか日記を更新できないそうだ。
それに比べて、オレは、1日に何度でも日記が更新できるので、言いたい放題なのだ。

ふわぁーはっはっは、この舌戦、勝った。←K妻が地団駄踏んでいる様子をご想像ください
 

買い物

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月24日(木)00時16分21秒
  缶詰めでフラストレーションが続いているせいか、なにげに買い物が多い。

まず、指輪物語全巻の朗読CDを購入。
全42枚なので、毎日1時間ずつ聞いても二ヶ月かかる計算だ。
本のページを開いて見ながら読むわけではなく、聞いていて、人名や土地の名前を確認したいところだけ見る感じか。
Rob Inglisという人の朗読なのだが、結構、味が出ていてオススメ。

***

猫神本家に放ったらかしになっていた「アブスライド」を運んできて、毎日、やっている。
腹筋を鍛える・・・というより出っ腹を引っ込めるのが目的。
すりこぎみたいなんですけど、コレ。

だが、それでは飽き足らずに、テレビで広告していた「ラテラル・サイ・トレーナー」も購入。
(だってK妻が欲しいって言うんだよ)
まだ届かないが、届いたら、感触を報告いたします。

***

これから仕事が休めない状態が続くので、とうとう近くのお医者さんに行ってインフルエンザの予防接種を受けた。
時期遅れかもしれないが、1週間ほどで抗体ができるので、3月は大丈夫だ!

***

とうとう花粉の時期がきましたな。
それと関連しているかどうかわからないが、顔と両手の甲が腫れている。小さなブツブツが出ている。じんましんか、何かにかぶれたのか。
K妻は、垣根か何かに触ってかぶれたのではないかと言うのだが・・・。
 

かなり反省

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月23日(水)23時37分16秒
  ここのところ缶詰め状態が続いているのだが、ちょっと気を引き締めないといけないな。
凡ミスが増えているからだ。

科学書で難しいのは、説明を「わかりやすく」することと「精確さ」の両立なのだが、たまに説明を変えて変えて修正していった結果、とんでもない間違いを書いて気づかないことがある。

おそらく、外部から見ていると、どうしてそんな凡ミスをするのかと首を傾げたくなるだろう。

こういうのは、一言指摘されると、驚くほど当たり前で、まちがえようがないほど初歩的なミスだったりする。

でも、書いているときに完ぺきに勘違いしているので、校正でも全然気がつかないわけ。

前に「百人一首」の校正で「ティファニーで朝食を」の小説版と映画版をまちがえていて冷や汗ものだったが、あの本は何度も読み返している愛読書だったので、逆に勘違いしても妙な自信があるから気づかなかったんだ。

さきほど、ある方から記述の誤りを指摘されて、アッと驚いた。
きわめて初歩的でまちがえようがないような・・・まちがいだ。
修士論文の計算で、素粒子の最終状態が3体以上のとき、解析的に位相空間を積分できないので、反応確率を求めるには数値積分しないといけなくて、かなり高度なテクニックを使った覚えがある。
だから、専門分野という奇妙な自信があり、全然まちがいに気づかなかったんだよ。
われながら嗤ってしまうが、ちょっと対策を講じないとダメだな。

うーん、センさん、グリペンさん、次回、校正チェックよろしく(汗)
 

ボツ原稿6

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月23日(水)18時37分46秒
   僕は芥川の尋問を再開した。
「芥川くん、なぜ、彼女を外に出した?」
「……」
「答えたまえ! 試験官内の出来事には干渉してはいけない、という刑法修正●条を忘れたのか?」
「恋をしたのです」
「なに?」
「ほら、顕微鏡でミジンコを覗いているうちに、その特定のミジンコが大好きでたまらなくなるとの同じですよ」
「それで試験管内からテレポーテーションさせて自分の妻にしようとでも思ったのか?」
「はい、《神》の特権ということで」
 僕は、思わず天を仰いで叫びそうになった。「おお神よ!」と。だが、そのシチュエーションの滑稽さに気づいて言葉を呑み込んだ。
 

ボツ原稿5

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月22日(火)12時27分24秒
   僕は、すぐさま、専用回線で国家治安局の江戸川科学部長に連絡をとった。
「もしもし、科学アカデミー副総裁の湯川ですが」
「やあ、こんな時間にどうしました?」
「一つ気になることがありまして……フィッシュバック3世の安否なのですが」
「なにか問題でも?」
「いえ、気の廻しすぎかもしれませんが、何か異変でも起きてやしないかと」
「待ちたまえ、管理部に確認してみよう」
 数分五、フィッシュバック3世の「独房」に異状は認められないことがわかり、僕は、適当にごまかして電話を切った。
「いったい、何を企(ルビ:たくら)んでいる?」
 僕は小さな宇宙からやってきた訪問者を睨(ルビ:ね)め付けた。女は無言のまま微笑んでいる。
「君は誰なのだ?」
「フィッシュバック3世の妻よ」
 この返答を聞いた僕の背筋に冷たい汗が流れた。
 もともとフィッシュバック3世は僕の恩師だった。だが、博士は自ら宇宙を創成し、その中身を詳しく研究するうち、現在の政治体制のもとでは決して許されない思想傾向をもつにいたった。あるとき、博士は、僕を研究室に呼び入れて、こう言った。
「湯川くん。君は、この研究が実用一点張りのものだと思っているかもしれん。卓上ブラックホールは、ミニ・ブラックホールを探査針として使ってやることにより、中身がモニターできることが判明した。われわれ外部の人間からは卓上ブラックホールでしかないが、その中は小宇宙になっており、銀河もあれば星もあり、すでに生命体の存在も確認されておる。わしは、試験官の中の宇宙といえども、われわれと同じような生命と意識をもった存在が棲息している以上、それなりの権利が生ずると思うのだ……いいかね、湯川くん、君をわしの右腕として、信頼しておるんだ……わしは、試験官宇宙もわれわれの宇宙も、どれかが絶対的なものではなく、その存在に優劣はないのだと主張したい。アインシュタインは時間と空間の相対性と唱えたが、わしは、それをあらゆる宇宙の相対性にまで高めることを提案したい。われわれが発見した試験官の中の宇宙は、単なる実用目的ではなく、その宇宙の中に生まれる生命と意識までも含めて、われわれの宇宙と対等にあつかわねばならない。われわれは、宇宙民主主義の幕開けを目撃しておるのだ」
 僕の父親は、当時、軍の幹部だったし、僕の奨学金も国家治安軍の予算から出ていた。それは博士もご存知だったはずだ。だから、いくら博士に個人的な親近感を抱いていたとしても、僕は、あくまでも国家体制に所属していたのであり、博士の過激な革命思想を受け入れることはできなかった。
 僕の告発により、ちょうどクローン技術が国家的な管理下におかれたのと同じように、フィッシュバック3世と僕が発見した試験官内宇宙は、国家の厳密な管理下におかれることとなった。僕の説得にもかかわらず、自説を曲げずに試験管宇宙との情報および物質と生命の交流を画策したフィッシュバック3世には、刑法修正●条が適用され、自らが創成した試験官宇宙に永遠に閉じ込められることとなった。
 フィッシュバック3世は、不世出の天才であったが、同時に政治的な危険分子でもあった。
 その妻が、どうして、この僕の研究室の試験官宇宙から抜け出てきたのだ? ありえないではないか。
 

チョコのトリック

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月21日(月)18時55分37秒
  瓶詰めのシャンパン・チョコレートを猫神本家から持ち帰った。

オレはチョコには目がないのだが、食べ過ぎると首の後ろに「にきび」みたいに吹き出物ができてしまう。
孫悟空が頭蓋骨を輪っかで締めつけられるのと同じで痛くて苦しい。

ここのところ電車の中でドトール珈琲の「アダージオ」というチョコを食べまくっていたら、案の定、首の後ろが大変なことになったので、しばしチョコレートを控えていた。

すると、食卓の上に放置されたままの瓶入りチョコを眺めていたK妻が、
「これ、食べていい?」
と訊ねるではないか。
日頃から体形に神経をつかっている(=プロのインストラクターだしね)ので、チョコも炭水化物も極力控えているようだが、瓶の格好が珍しかったらしい。
「いいよ」
 オレの許可が出たので、K妻は、瓶を手にとって栓をあけはじめた。
 しばらく瓶と格闘した揚げ句、
「ちょっと、これ、なんにも出てこないわよ」
 と言ってオレに瓶を放ってよこした。
「おー、ホントーだなぁ、瓶の中に船の模型を入れるのと同じで、チョコのほうがでかくて出てこないのう」
 もちろん、オレは最初から「からくり」を知っていて、K妻の行動を黙って見ていたわけだ。
「欠陥商品かしら」
「おー、そのとおりだ。なにしろ、瓶の底に大きな穴があいておるようだからな。ふわぁーはっはっは。愚か者め、瓶の栓はトリックなのだよ。チョコは底の穴から取り出すようになっておるのだ。ふわぁーはっ」←なぜ、嗤い声が中断したか、ご想像あれ
 

ボツ原稿4

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月21日(月)17時05分53秒
   芥川の周囲には、奇妙な恰好をしたエイリアンがいるかと思いきや、驚いたことに、われわれと同じ人間のような外見をしている。背は低く、どことなく楼蘭人と似た風貌で青い目をしている。衣装は……百年くらい昔の宇宙服のように見える。僕は、その試験官宇宙人をキッと睨みつけると、隣の芥川に視線を移した。
「君は、自分が何をしているのか、わかっているのか?」
「わかっています」
「では、申し開きをしてみたまえ……いったい、どうやって試験官宇宙と交信したんだね?」
「その……私が交信したのではななく、向こうから交信してきたのです」
「意味がわからんな」
「私も、最初は変だと思いました。ですが、試験官宇宙を格納している回転型の反重力容器に、微弱な電磁波信号があわわれるので、ここ一ヶ月ほど、ずっとその発信源を追跡してきたのです」(回転型の反重力装置→●ページ)
「それで?」
「リンデ宇宙座標137度、2・7度、●度付近から発せられた救難信号だとわかりました」(リンデの赤ちゃん宇宙→●ページ)
「そんなバカな! 試験官宇宙内の電磁波が外に漏れ出すなんてありえない」
「私もそう思いました。ですが、たまたま、モニター用の穴……つまりミニ・ブラックホールのことですが……に接続されている光ファイバーに亀裂が生じていまして」
 僕は汗びっしょりになって弁明を続ける芥川と、冷たい眼差しで僕を見つめ続ける女の顔を交互に見据えながら、事情を呑み込もうと必死になっていた。
 つまり、こういうことだ。芥川は、偶然、観察用に試験官宇宙に突っ込んである無数のファイバーの一つから漏れでた信号をキャッチした。その信号は、試験官宇宙内の交信が目的ではなく、試験官の外の世界、つまりわれわれの宇宙との交信が狙いだった。ということは……。
 僕は、さきほどから口を閉じたままの女に矛先を転じた。
「君の名は?」
「アリス」
「どこからやってきた」
「あなたがたが創った宇宙から」
「どうやってわれわれの存在を知った?」
「フィッシュバック3世という物理学者に教えられて」
 フィッシュバック3世は国家治安局の牢獄につながれているはずだ。それは試験官宇宙と同じ構造をもった卓上ブラックホールであり、外部からの手助けなしには、決して脱獄することができないようになっている。
 

解説

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月21日(月)17時04分17秒
  つまり、冒頭にシーンを付け足して、主人公も湯川から芥川に代えようと思いついたわけ。
だが、結局、ボツにしたので、名前も直したりしていない。
オレは真夜中、独りでマックに向かいながら、延々とこんな試行錯誤をくりかえしているのであった。
 

ボツ原稿3

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月21日(月)17時01分51秒
  これは前の2回の続きではなく、さらに書き足して、収拾がつかなくなってしまったバージョン。
下手な作家の悪戦苦闘の跡ということで、嗤いながらお読みくだされ。
とりあえず、オチにならないオチまで、日記に掲載しますのでな。ふわぁーはっはっは。←ちょっと壊れかけてる

***

試験官の中の宇宙 あるナイトサイエンティストの夢

 本書は科学エッセイである。エッセイは本来、自由なもののはずだから、しょっぱなに「試験官の中の宇宙」というショーとショートをもってくることにした。もちろん、本書の内容を(それなりにハードな)SFにしたのである。現実と仮想が交錯する物理学の世界は「宇宙という名の実験室」の寓話なのだ……。

   ***以下、冒頭の黒ページ用です

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の天才科学者、通称ドックは、奇妙な三相コイルらしきものを用いてタイムマシンを創った。それは、ジェレラルモータース元副社長の●デロリアンが男の夢を賭けて創った銀色に輝くスーパーカーに納められていた。
 デロリアンはその後倒産して、麻薬取引に手を出して逮捕された。犯罪人に成り下がってまで護りたかった夢とはいったい何だったのか。
 いや、そんなことはどうでもいい。
 オレが主張したいのは、三相コイルなんぞではタイムマシンは創れない、ということだ。実際、今、オレの目の前にはフィクションではなくノンフィクションとして稼働するタイムマシンがある。
 そう、オレは、ついに人類の夢であるタイムマシンを完成させたのだ。
 その手法は2001年の1月にネイチャー誌に発表された、ハーバード大学のハウ教授らによる「凍りついた光」の論文にまでさかのぼる。論文の中で、ハウたちは、止まった光が渦を巻いて原子集団に吸い込まれてゆく様子は、まるでブラックホールのようだ、と書いていた。
 もう一つのインスピレーションの種は、カリフォルニア工科大学のソーン教授らが1998年にフィジカル・レヴュー・レターズ誌に発表した「ワームホール型のタイムマシン」の論文だ。
 ワームホールというのは、あらゆる物質を吸い込んでしまうブラックホールと、その逆で、あらゆる物質を吐き出してしまうホワイトホールを、穴(トンネル)の真ん中で「縫い合わせた」ものだ。時空の虫食い穴などという、ありがたくない名前を頂戴しているが、早い話が、空間をワープするためのトンネルなのだ。
 申し遅れたが、オレの名は、東都大学助手、芥川一。文豪の芥川龍之介とはまったく関係ない。念のため。
 

 いつものように大学の自分の研究室の鍵をしめて、暗い廊下を歩いて、エレベーターの前まで来たとき、忘れ物をしたことに気づいて、踵をかえした。そして、ふたたび自分の研究室の前まで来たとき、中から話し声が聞こえてきた。
「……というわけで、私が君の創造主である私が君と君たちの宇宙を創造した……《宇宙》という名の閉じられた牢獄から君を解放してやった」(「無」からの宇宙の創成→●ページ)
 背筋がゾッとした。
 どうやら、助手の芥川が、刑法修正●条を破って、「試験官宇宙」と交信を試みたあげく、外部から試験官宇宙のトポロジーを変化させて、中身を取り出してしまったようだった。これまで営々と築き上げたきた東都大学教授・科学アカデミー副総裁としてのオレの地位も終わりだ。芥川もオレも永久追放されてしまうだろう。(宇宙のトポロジー→●ページ)
 だが、どうも変だ。
 フィッシュバック3世の論文、あの試験官宇宙と量子テレポーテーションを扱った論文は、発禁処分となって、もはや誰の目にも触れないようになっているはずだ。ネットと接続しているあらゆるコンピュータも、国家治安局により、違法論文がことごとく消去されている。(量子テレポーテーション→●ページ)
 今や、あの論文の存在を知っているのは、科学アカデミーの幹部が数人と国家治安局の公安部長より上の人間だけのはず……いや、そんなことはどうでもいい。問題は、このオレの目の前で、子飼いの部下が、試験官宇宙と違法な通信とテレポーテーションを行なってしまったという事実だ。危険だ。あまりに危険すぎる。芥川ほど頭の切れる男が、自らの宇宙を破滅させかねない愚行に及ぶとは、いったい、どうしたというのだ。
 オレは扉の鍵をあけると、怒りに燃えて研究室内に踏み込んだ。
「あ! 湯川先生!」
 振り向いた芥川の顔がみるみる蒼白になってゆく。
 

C級だってやればできる?

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月21日(月)01時09分12秒
  金曜日は、祝日の関係で朝日カルチャーセンターがズレ込んだため、茂木講座と同じ日になった。
茂木軍団は三次会まであったらしいが、オレは湘南新宿ラインに乗らないとダメなので、早々と退散。

***

土曜日は週末にもかかわらず表参道に仕事にでかけた。
テレビの科学番組をつくっている制作会社でブレインストーミング的にアドバイスをしろ、というので、K妻と一緒に出かけて行ったのだ。
取材先などは、ほとんど固まっていたので、あまり建設的なアドバイスはできなかったが。

寒かったので、そのまま表参道のビストロで食事をした。

最近、缶詰め状態の連続で、ゆっくり外食をする時間もない・・・そのわりには映画は観ているが。

「指輪物語」は「王の帰還」の特別版を買ってきた。
原作を読んでいないので、いちいち(原作を読破している)K妻に訊ねながら観たのだが、非常に面白かった。
映画館でも観たんだけどね。

特典のメイキングも愉しめた。ミニチュアで本当に作ったのか! CGと思っていたのが模型だと知って、ちょっぴり嬉しかったりして。

調子に乗って、指輪物語の英語のCDも注文してしまった。

***

肝心の仕事の原稿は遅れが取り戻せず、危機的な状況だが、なんとか態勢を立て直すつもり(汗)

***

日経新聞に「ガリレオの指」の書評を書いた。
一流の科学者兼書き手による科学読み物だが、科学を愉しもうという人には、量的にもきついかもしれない。
現時点での科学全般のきわめて精確な「定説」が載っているので、とにかく、一流科学者たちが現代科学をどうとらえているのか、といったことを知りたい知識欲旺盛な人にオススメできる本だ。
文系の人には正直いってきついか?

書評を書いていて、ちょっぴり複雑な心境になった。良書なんだけどね。

***

そういえば映画の指輪物語の監督、ピーター・ジャクソンって、スプラッター専門のC級映画ばかり撮ってきた人なんだよね。
そういう人が、いきなり、アカデミー賞総なめの作品を撮ってしまうところが、「創作行為」の面白い点だと思う。
つまり、このジャクソンという監督は、映画が好きで好きでたまらないわけ。どうやら、それだけらしい。スタッフも同じで、結果がスプラッターのC級映画であっても、別に卑屈になんかならない。同じスタッフが、指輪物語を作ってるんだから驚きだ。

もっとも、こういうのは、外野からすれば驚きかもしれないが、製作現場にいる人間からすれば、さほど驚くべきことでもないんだろう。

とにかく、C級映画のスタッフたちは、C級ではなく一流だったのであり、ちゃんとした仕事が与えられたら、きちんと仕事をしたわけだな。

B級映画ファンの一人として、指輪物語の映画は、喜ばしい快挙だ。
 

業務連絡

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月21日(月)00時44分22秒
  後援会サイトのβ版科学コラム+シュレ猫ロジー、更新しました。  

ボツ原稿2

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月20日(日)13時56分37秒
   だが、どうも変だ。
 フィッシュバック3世の論文、あの試験官宇宙と量子テレポーテーションを扱った論文は、発禁処分となって、もはや誰の目にも触れないようになっているはずだ。ネットと接続しているあらゆるコンピュータも、国家治安局により、違法論文がことごとく消去されている。(量子テレポーテーション→●ページ)
 今や、あの論文の存在を知っているのは、科学アカデミーの幹部が数人と国家治安局の公安部長より上の人間だけのはず……いや、そんなことはどうでもいい。問題は、この僕の目の前で、子飼いの部下が、試験官宇宙と違法な通信とテレポーテーションを行なってしまったという事実だ。危険だ。あまりに危険すぎる。芥川ほど頭の切れる男が、自らの宇宙を破滅させかねない愚行に及ぶとは、いったい、どうしたというのだ。
 僕は扉の鍵をあけると、怒りに燃えて研究室内に踏み込んだ。
「あ! 湯川先生!」
 振り向いた芥川の顔がみるみる蒼白になってゆく。
 

「夜の物理学」冒頭ボツ原稿1

 投稿者:湯川薫  投稿日:2005年 2月20日(日)13時54分32秒
  「試験官の中の宇宙」 あるナイトサイエンティストの夢

 本書は科学エッセイである。エッセイは本来、自由なもののはずだから、しょっぱなに「試験官の中の宇宙」というショートショートをもってくることにした。もちろん、本書の内容を(それなりにハードな)SFにしたのである。現実と仮想が交錯する物理学の世界は「宇宙という名の実験室」の寓話なのだ……。

***以下、冒頭の黒ページ用ボツ原稿(編集者ではなく自分でボツにしたもの。理由:もう少し長くしないと面白くないから)

 いつものように大学の自分の研究室の鍵をしめて、暗い廊下を歩いて、エレベーターの前まで来たとき、忘れ物をしたことに気づいて、踵をかえした。そして、ふたたび自分の研究室の前まで来たとき、中から話し声が聞こえてきた。
「……というわけで、私が君の創造主である私が君と君たちの宇宙を創造した……《宇宙》という名の閉じられた牢獄から君を解放してやった」(「無」からの宇宙の創成→●ページ)
 目の前が真っ暗になった。
 どうやら、助手の芥川が、刑法修正●条を破って、「試験官宇宙」と交信を試みたあげく、外部から試験官宇宙のトポロジーを変化させて、中身を取り出してしまったようだった。これまで営々と築き上げたきた東都大学教授・科学アカデミー副総裁としての僕の地位も終わりだ。芥川も僕も永久追放されてしまうだろう。(宇宙のトポロジー→●ページ)
 

携帯電話

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月16日(水)15時33分59秒
  ボーダフォンは契約件数が落ちているみたいだが、3Gは、かなりいい線いってると思う。
海外旅行に行ったとき、同じ電話でいいんだから便利だよな。
テレビ電話にもなるようだし。

だが、なぜか、あと一歩踏み出して3Gに変更するところまで行かない。個人的に。
いいとは思うんだが、「あと一歩」何か魅力が足りないのかなぁ。
不思議だ。
その「何か」が入ってくると、乗り換え組も増えそうな気がするんだが。

よくあるよね。
本でも値段が200円安ければバカ売れするのに、とか。
映画でも、あの俳優さえ出ていなければ見るのに、とか。

何が売れて、何が売れないかなんて、実は、紙一重のものが多いような気がする。
そして、売る側も買う側も、実際に店頭に並んでみないと結果はわからない。

なんだろうね、3Gに足りないもの・・・海外旅行には頻繁に行かないからかなぁ。

いつも思うんだが、遊びでいいから、自分で手で廻して充電できる機能とかつけてくれたら買うかも(笑)
 

エッセイ

 投稿者:KAORU  投稿日:2005年 2月16日(水)15時23分47秒
  最近、エッセイと書評の仕事が多い。
当然のことながら、難しい理論をわかりやすく説明するのが私の主な仕事だが、エッセイは好きですねぇ。
読むのも好きだが、書くのも好きだ。

この「湯川薫日記」だって、まあ、エッセイ風なわけだし。

「夜の物理学」は始めての科学エッセイで、しょっぱなに軽いSFショートショートを入れてみた。
どんな評価になるかわからないが。

書評の仕事は、もともと読書好きなのだから、まったく苦にならない。
褒めるべきところ大いに褒めて、一言、読者のために苦言も呈する、というようなスタンスだろうか。
太鼓持ちだと読者の参考にならないが、かといって、本の良い点を見ないで重箱の隅ばかりつついていては単なる嫌み爺になってしまうからな。

***

拾ってきた猫は名前が「軍曹」になった。
これまでいたコタロウは「伍長」。
オレがK妻の尻に敷かれているのと同様、コタロウは軍曹の指揮下に入った。

軍曹は、いまだに少し鼻水を垂らしているので、お医者さんからもらったウィルス撃退用の粉末を飲ませているのだが、暴れて引っ掻くので、とうとう背中に「まぶす」ことにした。凶暴なので、こうやって、自分で舐めさせるのがいちばんだ・・・と思ったのだが、K妻もオレも、いまだに軍曹が舐めているところを目撃していない。
うーむ。

誰か、粗暴な猫に薬を飲ます新方式を発明してくれ。

***

ここのところ缶詰め続きで大晦日以来、実家に帰っていないので、そろそろ、美味しいエビを買ってカロアに持っていってやらないとな。
カロアは、もうかなりの老齢なので、横浜には連れて来られないんだ。

本日は、CDの受け渡しで久しぶりにグリペン氏と昼飯を食った。
あまりにも寒いので、コートの襟をたてて、早々に引き上げてきた。
極寒だよ、今日の横浜。

暖かくして原稿書きに戻る。
 

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